今日は、看護師として
働いていたときの
ちょっと不思議な体験を
お話してみたいと思います。
それは、採血や点滴のときに
よく言われていた、こんなひと言です。
「針、入ってます?」
「今、採血してます???」
患者さんがそう聞いてくるのです。
私は、ありがたいことに
採血やルートキープ(点滴)
が得意な方でした。
「痛くないです」と
言っていただくことも多かったです。
でも、ただ“手先が器用だった
”わけではありません。
看護の技術として
もちろん意識していたのは──
針先が皮膚を押したり、
血管壁に当たらないようにする
ということ。
それが“痛み”につながるからです。
そして、
見えている青い血管を狙うのではなく、
あえて少し深くにある
“見えていない血管”を選ぶ
ことも多くありました。
なぜなら、その血管は、
針がほとんど入ったことがない分、
弾力があって、スムーズに採血できることが多いのです。
実は、針を刺す前に、
皮膚の上からそっと血管壁を押してみると、
どれくらい深さがあるかわかります。
そして、針先が血管内のどの位置にあるか──
“なぜか、わかる”のです。
それは視覚で見ているというより、
感覚の奥で、静かにキャッチしているような感覚。
そしてその感覚は、
どこか“直感”に近いものでした。
「僕の血管は難しいよ」
と言われる患者さんにも、
「大丈夫ですよ」
と笑顔でお答えして、
その方の体や自分と“対話するような感覚”で、
静かに血管を探す。
私にとってそれは、
目で視るというよりも、
指先で触れて
“感じてわかる”という、
ある種の静かな確信でした。
今思えば──
それは“技術”や“訓練”というより、
直感に近いものだったのかもしれません。
そして、何より
不思議がっていたのは、
私より患者さんの方だったのかもしれません。
目に見えないけれど、
たしかに“わかる”感覚。
その頃から私は、
直感を信じて動くとうまくいく、
ということを
体の感覚を通して、
教えてもらっていたのだと思います。